コミュニテイについて思う事 - ジョーンズ 享子          

気仙沼と私

私は日本人ですが気仙沼の人間ではありません。それでも気仙沼がとても好きです。日本フルブライトメモリアル基金教員プログラム (FMF)とマスターテイーチャープログラム(MTP)を通して10年近く気仙沼の方達と一緒に仕事をしてきました。その間に気仙沼がいかに素晴らしい所であるかわかってきました。山と海の幸に恵まれ、人々は自然と人的資源の持続的利用に専心しています。JFMF/MTPプロジェクトに参加していた間に、気仙沼が持続的発展への原則を守ることに非常に熱心なことから、国連も気仙沼を持続発展教育 (ESD)の先進的な地域であると認めるまでになりました。 

MTPに参加することで気仙沼はアメリカ各地の教員や生徒たちとの交流をしてきました。ビデオ会議などの新しい媒体の使用など懸命に努力し様々な場所(例えば、ウィスコンシン州マデイソン、テキサス州の小さな町カリスバーグ)の学校と気仙沼の教室をつなぎました。気仙沼の教員達はESDの実践的方法についてアメリカ人教員や国連の専門家を養成する支援もしてきました。気仙沼は深く根付いた伝統と暖かい心遣いのある活気溢れる地域社会でした。それはスローフード運動を取り入れている事にも表れています。

今日、私たちが目にする気仙沼地域の景色はがらりと変わっています。海に押し流された建物と燃え残った瓦礫の山などが破壊された瞬間を物語っています。ニュースでは自宅の2階に3日間閉じ込められていたところを助け出されたお年寄りの映像も流れました。老人は救助隊員に大丈夫かと声をかけられると、1960年の大津波でも生き延びたと言い、元気な声で「町を再建しなきゃ!」と言ったのです。この精神が気仙沼人気質かもしれません。

しかし気仙沼という地域社会の再建を考える時、避けて通れない疑問がわいてきます。つまり地域社会の再建とは何かという疑問です

第二次世界大戦後ギリシャの再建を担った再興大臣であるA.C.ドクシアデイスは再建の観点から地域社会(コミュニテイー)の5つの基本的要素を挙げています。それは:1. 自然:自然環境全体、2. 人間:地域社会の構成員、3. 社会:人々が形成するいくつもの集団、4. 外殻:人が住み生活を守る住空間、そして5.ネットワーク:人間が地域社会に於ける自らの生活を繋ぐコミュニケーションや交通機関として使用する社会システム。この5つです。ドクシアデイスによれば生きている地域社会はこの要素の全てを統合しそのコミュニテイの統一性ある特質的要素となる何かを造っていくものであると述べています。統一性のある特質的要素とは一般的に我々が考える精神とか気質のことです。

気仙沼が被った被害を見ると、その地域社会が破壊されたように見えます。気仙沼は多くの人々を失い生存者は悲しみや大変な苦難の状況に置かれています。特に住空間である外殻と通信交通ネットワークの被害は深刻です。それでも気仙沼人は今でも気仙沼人です。一人ひとりが集まった全体が今でも気仙沼というコミュニテイーなのです。彼らはあちらこちらの避難所にいますが、皆まだ一緒ですし、陸地と海はまだ彼らのために残っています。彼らの地域社会の健康を回復する為に、気仙沼人は自分の生活のために新しい外殻と物質的なネットワークを再構築しなければなりません。それは難しい課題ですが、友人の手助けがあれば立ち向かっていくことのできる挑戦なのです。それを可能にしているのは、気仙沼人が自分達の故郷が特別な場所であり将来への夢とその魂が生きている場所だと信じているからです。皆で気仙沼や他の被災地にいる人々と彼らの夢を分かち合い、夢や可能性が実現できるよう皆さんのご協力をお願い致します。

 

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